旅人をやめる
旅が好きで多くの場所を訪れた。
一人で出かける事もあれば、友人たちと時間を過ごすことも楽しかった。
12月海外で過ごすクリスマスと正月はとても心が寒く感じ、いくら素晴らしい景色や豪勢な食事の前であっても、大きな荷物をどこかに忘れたようなもの悲しさを感じたものだ。
いくら頑張って居場所を作り、財産を築き生活をしていても、自国でない寂しさを感じ、そこに存在する物(者)たちは、全てショーウインドウに飾られた物でしかなかった。
自身の居場所は旅人である限り、限界がある。本当に欲しいものは、家族を作り、友人を作り、地域に溶け込んで、何十年もかかってようやく手に入るものではないだろうか。
「結婚、子供を出産し、誰かが死を迎えお葬式を出して、家と成る」と言う。
旅をしている時は多くの刺激や知識の蓄積、楽しい事の連続で、嫌な事があれば、すぐに違う場所に移動できると言う良い点もある。
しかし本当に心から満たされる思いとは、ショーウインドウの中ではなく、手の中にしか存在しない。
帰る場所があって放浪が出来る。
だから今、旅人ではなく、そこに住む住人であることを決めた。